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黒葉雅人『宇宙細胞』 [本‐小説]

先日、図書館で見つけたので借りてきた。何やらとんでもない小説だよ、と聞いてはいたんだが、いやあ、本当でした。もうどう言ったらいいものやら、奇想SFの極北という謳い文句に違わない大ぼら話だった。

宇宙細胞

宇宙細胞

  • 作者: 黒葉 雅人
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2008/09/17
  • メディア: 単行本

最初は見るもおぞましい形に変貌した犬の発見から始まった。当初は南極にだけ存在していた、猛烈な食性を持つ粘体細胞の暴走。極地研究所雪氷部員として南極に派遣されていた伊吹舞華は、ジャーナリスト目黒丈二とともに、絶望的なサバイバルに身を投じるが……。

第9回日本SF新人賞受賞と書かれているものの、上に引用したあらすじを見るに全然SFっぽくない。実際に読み始めるとこれがまた、結構グロいぐちゃぐちゃ系のホラー風味なので驚いた。単純すぎる連想ではあるが『遊星からの物体X』+『盗まれた街』系の侵略SFなのかな...と思ってたら『ゾンビ』的な終末ものに進み始める。さらには『寄生獣』の要素も入ってたりする。一体全体なんじゃこりゃと。

しかも独特の癖のある文体で書かれたクリーチャーの描写がまた、悪趣味一歩手前くらいの執拗さでなあ。苦手な人なら途中で本を閉じかねない。ところがそんな最初のハードルを越えてしまえば先が気になってページを繰る手が止まらない。リーダビリティはかなり高いと思う。あくまで相性が合えば、ということなので万人にオススメはしづらいけれど。

ここから少しネタバレ気味かも、念のため。そんなこんなで読み進め、後半に差し掛かると「は?」と思うようなとんでもない方向に物語は展開し飛躍し始める。しかもそのスケールが半端ない。正にミクロからマクロ、何しろ全宇宙規模まで行ってしまうのだ。いやあ、こりゃたまげた。一個の細胞レベルからいきなり宇宙ですよ、読んでいて頭がクラクラしてきた。この手の話ならSFの先達たちがとっくに書いてるよ、という批判もあるようだ。でもなあ、完全にオリジナルなものなんて出てくる余地は残ってないんだから、そんな批判はあまり意味を成さない気もする。自分もしばしばやってしまうので偉そうなことは言えないんだけど。

先に書いたように少々人を選ぶところはあるが、特大のスケールで描かれる大ぼらを、想像力をフルに発揮して読むと良いと思う。いや十分楽しませてもらいました。

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