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飛鳥部勝則『堕天使拷問刑』 [本‐小説]

興味を持ちながらもなかなか手を出せなかった本、やっと読了。ハードカバー、二段組み、400頁超とかなりの分量だった。ミステリであり、オカルト風味のホラーであり、ボーイ・ミーツ・ガールな青春小説でもあるという。自分は割と楽しんだが、好き嫌いが分かれる本かもしれない。

堕天使拷問刑 (ハヤカワ・ミステリワールド)

堕天使拷問刑 (ハヤカワ・ミステリワールド)

  • 作者: 飛鳥部 勝則
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/01/25
  • メディア: 単行本

両親を事故で亡くし、母方の実家に引き取られた中学1年生の如月タクマ。が、そこではかつて魔術崇拝者の祖父が密室の蔵で怪死した事件が起きていた。さらに数年前、祖父と町長の座をめぐり争っていた一族の女三人を襲った斬首事件。二つの異常な死は、祖父が召喚した悪魔の仕業だと囁かれていた。そんな呪われた町で、タクマは「月へ行きたい」と呟く少女、江留美麗に惹かれた。残虐な斬首事件が再び起こるとも知らず……

舞台となる都会から遠く離れた山間の小さな町。時に良識や常識、法律よりも古い因習が優先される閉鎖的な共同体。ごく一部を除いて過剰なまでに主人公を敵視し排斥しようとする住民たち。主人公のアウェイっぷりがハンパないことになってます。なにしろ敵視される理由が「お前はツキモノイリだから」だものな。ちなみにツキモノイリとは、なんというか、悪魔憑きとかそんな感じです。言い掛かりなんですが。

著者は相当なホラー小説好きらしく、本の中程で登場人物の口を借りて「おすすめモダンホラー」なんてことを一席ぶつくらいだ。しかも一章まるまる使って。読んだことのないタイトルがたくさんあったので個人的には参考になったけど。その意味でも多くのホラー作品(小説だったり映画だったり)から引用されてる要素もかなりあるんじゃないか。残念ながら自分には判別できなかったが。

引用といえば、あらすじにも登場する少女、彼女のイメージはどう考えても某アニメのキャラクターそっくりだ。安易な連想かもしれないが「月へ行きたい」なんて言われたらな、Fly Me to the Moon てことだよなきっと。それ以外にも小説、映画、漫画やアニメ等々、さまざまなエッセンスをぶち込んだごった煮スープみたいな作品で、そのままこの作家の持ち味なんだろう。それ故に一度、不本意な事態を招いてしまったのか。

ミステリとして読むと怒り出す人の方が多そうだが、まあそこは謎があって人が死ねばとりあえずミステリ、くらいの鷹揚な気持ちで(語弊は承知ですが)。ホラーとして読むと...どうなんだろ、熱心な読み手じゃない自分には判断が難しいが、ぶっとんだ奇妙な人々と不穏な空気は十分に堪能できた。ラストは意外にもほろ苦い締めくくりになってます。

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