2009-12-21 Mon 初野晴『退出ゲーム』 [本‐小説]
評判が良いと聞いていたがやっと読めた。勝手に期待値を上げすぎたせいか大満足とはいかなかったが。
穂村チカ、高校一年生、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみで同じく吹奏楽部のホルン奏者、完璧な外見と明晰な頭脳の持ち主。音楽教師・草壁信二郎先生の指導のもと、廃部の危機を回避すべく日々練習に励むチカとハルタだったが、変わり者の先輩や同級生のせいで、校内の難事件に次々と遭遇するはめに――。
長編ではなくシリーズものの短編集で、文芸誌『野性時代』に掲載された表題作を含む三篇と書下ろしの一篇という内訳。主人公たちの所属する吹奏楽部に関わる人物が各話(シリーズ第一話を除く)にひとり登場し、その人物が抱える問題や謎を解決する、という構成だ。上に引用したあらすじが書かれた帯には「高校生ならではの謎と解決が冴える、爽やかな青春ミステリの決定版」という惹句も書かれている。
だが、「高校生ならではの謎と解決」という部分には少々首をかしげてしまう。それが適用されるのは第一話だけだ。それ以外の三篇はどちらかと言えば校外の出来事を扱っており、扱う謎もその解決とともに現れる真相も「高校生ならでは」とは言い難いからだ(コナンや金田一少年のように血なまぐさい殺人事件を扱ってるわけじゃない、念のため)。もう少し身近な題材を取り上げても良かったんじゃないかなと。
ミステリにおける探偵役の常として、どうしてそんなことまで知ってるんだよ、と野暮は承知でツッコミたくなるほどの知識量と洞察力を持つことが多い。この小説でもそうだ。探偵役の少年は高校一年生とは思えないほど聡く、人生の機微に長け老成すらしている(バランスを取るためか狂言回し役の少女が思考より行動、言ってしまえば「アホな子」気味に描かれているんだが)。それがトリック等の解決に直結しているため、ミステリとしての出来映えには感心しつつも微妙にもんにょりさせられた。俗に言うところの青春ミステリって難しいよなーと。そもそもミステリと青春小説って両立しないんじゃないかとすら考えてしまった。
楽しく読めたことは間違いないが、このシリーズを読み続けたい、とはならないんだ。既に刊行されている続編『初恋ソムリエ』もおそらく手に取らないと思う。なんだろう、相性なのかな。
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