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映画『ルパン三世 風魔一族の陰謀』 [アニメ感想‐映画]

頻繁に、というほどじゃないが時々DVDを引っ張り出して見直す。そして見るたびに複雑な気持ちになる。アニメ『ルパン三世』シリーズの中では存在感が薄く、むしろ「なかったこと」扱いされていると言っていいんじゃないか。これまで一度もテレビで放映されたことがないはずだし。色々な意味で気の毒な作品だ。

ルパン三世 風魔一族の陰謀 [DVD]

ルパン三世 風魔一族の陰謀 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東宝ビデオ
  • メディア: DVD

ストーリー中心に見ると特筆すべき点は正直なところ無い。DVDパッケージ裏のあらすじを引用しようかと思ったが止めた。さほど長くないあらすじ文でストーリーをすべて説明できてしまうから。要するにその程度の内容なのだ。劇場公開もされたようだが劇場用アニメとしての格はなく尺も短い(本編73分)。当初はOVAとして企画されたそうだし、せいぜいがテレビシリーズの拡大版といった趣だ。

冒頭、五右ェ門の結婚式から映画は始まる。実はこのくだりからして好きじゃないんだけど。ルパンシリーズはさまざまな人が手懸けていることもあって各キャラクターに後付け設定がやたらとある。特に最も長期にわたった第2期テレビシリーズが特徴的で、やはり五右ェ門の結婚がらみのエピソードがあったはずだ。しかし何より許しがたいのは二つあって、一つは「斬鉄剣はコンニャクを切れない」、もう一つは「次元はトレードマークの帽子がないと射撃で的に当てられない」という設定だ。もうね、噴飯ものだったよ当時は。この二つの後付け設定を生み出したというだけで自分は第2期テレビシリーズを評価していないのだ(個別には好きなエピソードもあるんだけど)。五右ェ門の結婚式シーンはその第2期テレビシリーズを思い起こさせてなあ。

閑話休題。作画に注目するとすごく出来がいい。本当によく動いている。さすがにテレコム・アニメーションフィルム(TAF)の制作だけはある。下の画像(差し障りがあれば削除します)を見てもらえば一目瞭然だが、絵柄は第1期テレビシリーズ、もしくは『カリオストロの城』を髣髴とさせる。この辺りは監修の大塚康夫、作画監督(キャラクターデザインも)の友永和秀の意向だろう。宮崎駿のテイストが含まれない分、個人的にはこの絵柄の方が好きだ。

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この作品の立場を微妙なものとしているのはルパンたちメインキャストの交代にあるはずだ。自分は制作・公開当時にファンからの強い反発があったのだと思っていた。しかし参考に見たWikipediaの記述によればもっと複雑な顛末があったのだなーと。仮に本人もしくは関係者の証言に基づいていたとしても、時間の経過によって自分に都合よく記憶が修正されることはよくあるし、鵜呑みにすることは避けるべきとは思うが。
⇒【声優陣入れ替えに関して(ルパン三世 風魔一族の陰謀 - Wikipedia)

ちなみにメインキャストの変更は以下のとおりだ。たった一度だけの顔ぶれだったが。

  • ルパン三世 ・・・ 山田康雄 ⇒ 古川登志夫
  • 次元大介 ・・・ 小林清志 ⇒ 銀河万丈
  • 石川五右ェ門 ・・・ 井上真樹夫 ⇒ 塩沢兼人
  • 峰不二子 ・・・ 増山江威子 ⇒ 小山茉美
  • 銭形警部 ・・・ 納谷悟朗 ⇒ 加藤精三

各キャストたちは申し分ない演技を聞かせてくれる。特に古川登志夫のルパンは絶品。最初こそ諸星あたる(現在ならピッコロか)を連想してしまうがすぐに慣れるし。銀河万丈の次元はちょっと重厚さが増しているがまったく問題はない、もともと饒舌なキャラではないしね。小山茉美の不二子はアクティブな女性という感じでお色気はその分薄めだ。五右ェ門への塩沢兼人(既に故人なのだな)の起用は二枚目役として妥当だろう。加藤精三の銭形は納谷悟朗に比べ少し年齢と堅物さが上乗せ、という印象。

仮にこのキャストが続投していたら、いや、また彼らとは違う声優が起用されたとしても、ルパンシリーズは新しい魅力を発揮できていたのかもしれない。山田康雄らオリジナルキャスト(厳密には違うがそう呼んで差し支えあるまい)への思い入れは自分も強い。しかし過剰に固執することが果たして正しいのか。『ドラえもん』での声優交代劇とそれにまつわる賛否両論を経験した後ではつくづくそう思う。

声優はあらゆる役を演じられる。老若男女を問わず、時には人間ですらないキャラクターだって可能だ。だがどんなに秀でた声優でも加齢に伴い声は衰える。そして馴染み深いキャラクターほどそれを顕著に感じるのだ。先日、久しぶりに『サザエさん』を見て波平の声の衰えぶりに衝撃を受けた。演じる永井一郎は名優だがすでに78歳だものな。そして『ルパン三世』においても同様に感じる場面は多い。特に不二子と銭形だ。不二子からは妖艶さが消え、銭形にはもう地の果てまでルパンを追える活力は感じられない。

制作サイドでのさまざまな事情、思惑や確執、あるいは耳に馴染んだ声が変わることを許容しなかったファンの狭隘さ。いずれにしろ『ルパン三世』が生まれ変わる機会はおそらく永遠に失われてしまった。実現はしなかった企画だが、宮崎駿が押井守へ「ルパンに引導を渡せ」と頼んだのは正しかったのかもしれない。『風魔一族の陰謀』を見ると作品の内容とは別にいろいろなことが頭をよぎってしまうんだな。

YouTubeに予告編の動画があったので。


ルパン三世 風魔一族の陰謀 予告編

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