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ハルヒシリーズの『分裂』と『驚愕』を読んだ [本‐小説]

ファンにとってはまさに待望の新作『驚愕』が刊行されたので。実際には一か月ほど前に読み終えていたのだが、遅ればせながら感想など。自分は一繋がりのエピソードである前作『分裂』を未読だったのでまとめて読むにはいい機会だったが、待ちわびたファンからすればこのブランクは洒落にもならんだろうな。
「我々は4年待ったのだ!」(cv:大塚明夫)みたいな。いや冗談抜きで評価すら変えかねないよね。

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの驚愕(前) (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの驚愕(後) (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)
涼宮ハルヒの驚愕(前) (角川スニーカー文庫)
涼宮ハルヒの驚愕(後) (角川スニーカー文庫)

書影のとおり一本の長編を三分冊した構成になってる。ちなみに『驚愕』はオマケの小冊子が付いた前・後巻セットが初回限定版として発売されており、自分が購入したのもそちら。うーん、商売上手め。

あらすじに関しては書かなくてもいいような気もするが一応。キョンの中学時代のクラスメイトにして互いを親友と認め合う一人の少女、佐々木さんとの偶然の再会がなにやらとんでもない事態を引き起こすことに・・・みたいな感じです。主人公(この場合はヒロイン)と同じ能力を持つ可能性がありながらそうならなかった人物、さらには主人公チームの対照となる敵対キャラが登場するという、バトル漫画であれば最終エピソードのような展開で、これが最終回だと言われても納得してしまいそう。これはネタバレではないと思うが、このエピソードは一種のパラレル物でもあって、何故そんなことが、そしてどう解決させるのか、という辺りが興趣となるかな。作者の別シリーズである『学校を出よう!』の第2巻ほどには構成も込み入っておらず、アクロバティックな解決でもなかったが楽しく読むことができた。

この「涼宮ハルヒ」シリーズは最新刊も含め11冊が刊行され、いわゆる長編と呼ばれるものは5篇ある(『分裂』と『驚愕』は併せて1篇とカウント)。自分が読んでいるのは第1作目の『憂鬱』、映画化もされ人気の高い『消失』、そして今回の『分裂』+『驚愕』と長編ばかり。たまさか読んだ三編には共通点も多いように感じていて、要は「これって基本的には同じ話だよね」ということ。残念ながら取りこぼし(『溜息』と『陰謀』)があるため長編すべてに共通する特徴か断言できないのは厳しいが、その辺りを少し書いてみようと思う。

いずれも主人公であるキョンが下す決断と選択が肝になっている点。記念すべき第1作の『憂鬱』では「自分自身が、それもヒロインの相手役という重要な役どころを担って舞台へ上がるか否か」を迫られるわけです。続いて『憂鬱』のSIDE-Bもしくは変奏たる『消失』では「主要キャストの役柄および配置の一部変更(それに伴う脚本の修正)に応じるか否か」となるでしょうかね。そして今回の『分裂』+『驚愕』、ここでは「自身を除く主要キャストの総入れ替え(それに伴う脚本の修正)に応じるか否か」であるだろうと。またクライマックスの展開も予期せぬ異空間(『消失』では平行世界か)からの脱出が描かれるあたりも共通かな。どのエピソードにおいてもハルヒに対するキョンの想い、これが最大のポイントだったりするのは興味深い。

  • キラキラ輝く天の川銀河を閉じこめたような瞳
  • 三重連星のように輝く核融合じみた笑顔
  • 真珠みたいに白い歯
  • 輻射熱を放っているとしか思えない圧力笑顔
  • 満月がかすむほどの笑顔
  • 真夏のヒマワリも横を向きそうな明度と熱量を持つ笑み
  • 牡牛座の散開星団を丸ごと圧縮したような笑顔

上に書き出したのは『分裂』と『驚愕』においてキョンがハルヒの様子を表現する際に用いた修辞の一部です。基本的には女性を悪く言うことの少ないキョンですが、それにしてもベタ惚れだなおい、と裏読みしたくなりますな。本人はこれまで「そんなわけあるか」と照れ隠し気味に否定してきたが、今回はとうとう自分の気持ちを半ば認めてるような描写もありましたね。

佐々木さんという魅力的なキャラクターも登場し、次作への前振りのような箇所もあったので、まだまだシリーズは続いていくのかもしれない。同時にここで終わってもいいんじゃないか、と思えたりもして。それほど綺麗に締めくくられてるんですよ今回のエピソードは。最新作が発表されるまでの4年という年月、これはファンにとっても作者にとっても様々な変化をもたらす時間だったのだろうなあと、そんなことを考えてしまいました。

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コメント 2

arkstar

シリーズ物って、巻数が増えて行ったり、年数が経つと周りの社会情勢に引っ張られる部分って出てきますよね。
作者さんの思いの部分が変わるからこそなのですが、
それがファンとの乖離を生む事も有るので、
人気シリーズだと冒険し辛い部分も出てくるのかなぁって感じてしまいました。

それと、お帰りなさい(^_^)/
by arkstar (2011-07-21 20:43) 

chokusin

>arkstarさん
コメントありがとうございます。すっかり更新サボってしまいました。

繋がってる話なのに『分裂』と『驚愕』で雰囲気が変わった印象があるんですね。
まとめて読んだ自分はより強くそれを感じたのかもしれませんが。

kotobukimaruさん、arkstarさん、kakasisannpoさん、おどんとグリフスさん、
nice!をありがとうございます。
by chokusin (2011-07-22 20:10) 

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