2009-07-20 Mon 『PLUTO』第8巻(完結) [漫画]
まずは無事完結したことを喜ぼう。2005年度の文化庁メディア芸術祭マンガ部門において優秀賞を、同時に第9回手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞した話題作の割に、その完結にはあまり注目が集まったようには見えなかったが。
途中、単行本で言えば5巻あたりで一度興味を失いかけた。他の浦沢作品のようにだらだらと無駄に長く続きそうな嫌な予感があったからだが、オリジナル作品とは違って元になる作品が存在する以上、そういつまでも引き伸ばすことはできまい、と思い直し読み続けた。全8巻というボリュームが多いのか少ないのかは判断が難しいが、その締めくくりとなる最終巻を読み終えた率直な感想は少々肩透かしだったというものだ。特に「憎悪からは何も生まれない」という結論に関してはいまさら感を拭えなかった。あくまで少年漫画として描かれたのだとしても。
ただ自分は原作である『鉄腕アトム - 地上最大のロボット篇』をよく覚えていない。確か過去に一度だけ読んだはずだが細部をかなり忘れている。そのため判断が難しい部分もある。もちろん一本の独立した作品として評価するべきとは思うものの、1964年に発表されたオリジナルから40年を経て、あえてリメイクを行うにあたって、浦沢直樹と長崎尚志が付加しあるいは変更した、しなければならなかった点はどこか。その比較はやはり必要だし、それを怠っては片手落ちになってしまうはずだ。やっぱりもう一回『地上最大のロボット』を読まなきゃ駄目か。
『PLUTO』単行本2巻のあとがきに手塚眞が「PLUTO誕生秘話」と題した文を寄稿している。その中で一度は浦沢側からのリメイク企画を蹴ったが、後にある条件を加えて承認したと書かれている。その条件とは浦沢作品として似顔絵のようなものじゃなく浦沢の絵柄で描け。そしてやるなら安易なオマージュに逃げずガチンコで勝負を挑めと。まあ随分と上からものを言ってるなと思うが、同時に当然の要請でもある。檄を飛ばされ浦沢側がどのようにプランを変更したか自分は知らないが、その時プレゼンしたという当初のプランどおりならどんな『PLUTO』になっていたのかも興味深い。
以下蛇足。自分は『鉄腕アトム』にさほど思い入れがない。『PLUTO』でも描かれた「ロボットが心を持つ」という点に関して言えば、自分にとって思い入れの強い作品は石森章太郎(どうしても石ノ森表記に馴染めないのであえて)の『人造人間キカイダー』の方だ。『PLUTO』を読みながら連想したのはゲジヒトやアトムではなくジローの苦悩だった。
コメント 0