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おがきちか『エビアンワンダー』 [漫画]

この作者の本は初めて。ジャンル的にはファンタジーだ。

姉・フレデリカ。悪魔と契約し、悪人の魂を狩り、それを地獄に供給する。彼女は銀符。
弟・ハウリィ。フレデリカの願いで悪魔によって命を与えられ、銀符に仕え守る。彼は従符。
世界は彼らに何を与えてくれるのか――。

掲載誌の廃刊に伴って打ち切りとなり、その2年後に移籍先でタイトルに『REACT』が付いた続編が再開、完結という経緯があるそうだ。今回購入したのは移籍後に出た新装版の方だが内容に変更はないと思う。正・続編(便宜上こう書く)とも各2巻づつ、通しても4巻で完結しているので読みやすかった。間に2年のブランクがあるものの、知らずに読めば全く違和感なく繋がっている。

エビアンワンダー 1 (1) (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

エビアンワンダー 1 (1) (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

  • 作者: おがき ちか
  • 出版社/メーカー: 一迅社
  • 発売日: 2005/11/25
  • メディア: コミック
エビアンワンダーREACT 1 (1) (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

エビアンワンダーREACT 1 (1) (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

  • 作者: おがき ちか
  • 出版社/メーカー: 一迅社
  • 発売日: 2004/12/25
  • メディア: コミック

絵柄は女性作家の描くファンタジー作品に多いタイプ、というのが第一印象(自分の持つイメージは偏っているけど)。人によっては癖のある絵柄と感じるかもしれないが、鋭さと軟らかさを併せ持っていて魅力的だと思う。特に女性の身体の線が上手い...と思ったら、以前は別名義で男性向け作品(はっきり言えばエロ漫画)を描いていたそうだ。なるほど納得。女性(の身体)を魅力的に描けることを要求されるジャンルだものな。そんな絵の魅力と相まってヒロインであるフレデリカが凄くいい。「この世に贖える罪などない」と言い切る彼女は悪人にとっては正に地獄よりの使者だが、自らもまた赦されざる者であると覚悟している。そんな彼女を突き動かすものは純粋で強い怒りだ。そしてその怒りが悪を狩る力となる。こんな格好いいヒロインは久しぶりだった。

この作品では神と悪魔、罪と罰、裁きと赦し、といった要素が扱われている。これらを扱うのはかなり難しいはずで、慎重さと同時に一定の距離を保ち続けることが重要になると思う。作者自身もあとがきで「俗っぽく乾いたお話」を描こうとしながら「宗教がからむとちょっとしっとりしてしまったかな」と述懐している。こう書くと敬遠されてしまいそうだがご心配なく、特定の思想・信条等に偏っているなんてことは全くない。むしろ普遍的な題材としてしっかり消化されているし、2年もの中断があったとは信じられないほど一貫している。結末の見事さも含めてこの作者はかなり上手いです。拾い物でした、おすすめ。

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